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2015年 08月 31日
彗星のように現れ、彗星のように去っていった天才ジャズ・ベーシストといえば、スコット・ラファロの名が先ず浮かぶ。 確かにビル・エヴァンスとの4枚のアルバムはどれもがすばらしく、彼とポール・モチアン(ds)がいなければ、ビルはインター・プレイ・ジャズを確立できなかったかもしれない。 だが、それ以上にジャズに革新をもたらしたベーシストはジャコ・パストリアスだろう。 彼のベースを初めて聴いたのはウェザーリポートの「Heavy weather」('77)だが、「Birdland」の初っぱなのあのイカしたフレーズには参ってしまった。彼のベースはエレキベースだが、フレットレスなのでアコースティックな響きがあり、メロディアスで超速弾きの自由奔放な演奏はとても魅力的だった。 ジャコによってベースは裏方の楽器からソロ楽器に格上げされた。 その魅力はスタジオ録音よりライブでさらに倍加される。 私はジャコの入ったウェザーリポートのアルバムでは「8:30」('79)が一番好きだ。 だが、ジャコの凄いのはそれだけではない。 ウェザーリポート解散直前に吹き込んだ「Word of mouth」('81)では、単なる1ベーシストからトータルな音楽家、コンポーザー、バンドリーダーへと脱皮している。 そして翌年のオーレックス・ジャズ・フェスティバルでこの録音のメンバーを中心としたビッグバンドを引き連れ、来日する。この時の充実したライブの様子は「Twins I」「Twins II」('82)で聴くことができる。 実は「Invitation」('82)は、日本で発売されたこの2枚のアルバムを編集して1枚にし、世界発売されたものだが、そうとは知らない私は最初に輸入版の「Invitation」を買って聴いて、なんてカッコいいんだろう!と毎日病みつきになって聴いた。特に「Soul Intro」から「The Chicken」が始まる辺りはゾクゾクしながら毎回聴いた。 その後「Twins I&II」も聴いたが、どこか間延びした所があり、それらを削り取った「Invitation」の方がやはり私は好きだ。ここにはジャコの音楽の一番良い部分だけがある。 これとほぼ同じメンバー&ラインナップで81年12月1日に吹き込まれたジャコの30才の誕生日の「The Birthday Concert」もとても充実したライブで、この頃がジャコが一番輝いてた時期だろう。 その後しばらくジャコの話は聞かなくなった。 どうしたんだろうと思っていたら、コカインと酒で奇行が目立つようになったという良くない噂ばかりが流れて来た。どうしたんだい、ジャコ?!と心配する反面、いや、ジャコは天才だからそのうち必ず復活するさ!とそれを打ち消す思いが相半ばし、複雑だった。 そして最悪の結果がやってきた。 泥酔状態のジャコがガードマンとの乱闘で頭部を強打し、意識不明の重体のまま亡くなったというのだ。 にわかにはとても信じられなかった。あの凄いベースがもう聴けなくなるなんて。 儲け話しか考えない音楽業界の連中は追悼と称してジャコの未発表ライブのCDをすぐさま立て続けに発売したが、どれも屑みたいな代物で、酷いものだった。
by odyssey-of-iska
| 2015-08-31 22:00
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