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2009年 02月 14日
昔、ジャズは嫌いだった。 初めて聴いたのは高校生の頃で、(その当時ロックとポップスに強く惹かれていた私は)「なんて暗い音楽なんだろう」と思った。 ジャズ喫茶に連れていかれて「どうだった?」と感想を聞かれても、「嫌いだ」と答え、「なぜ?」と聞かれても、「要するにジャズだから」と理由(わけ)がわかったようなわからないような答えをしていた。 それが、1973年、テレビでNHKを見ていたら、大男の黒人がサキソフォンを振り回しながら、オレンジ色の光の中でカリブ海の風のような音楽をボウボウと奏でている。なんて素敵な曲なんだろうと思い、その曲を覚えてしまった。 大学に入り、どうやらあれはジャズだったらしいと気づいたが、それが誰がやってる何という曲かはわからなかった。 大学院に入り、早稲田祭で展示をすることになり、私の音楽の師匠となるAと一緒に徹夜をする羽目になった。 真夜中、退屈しのぎに馬鹿話をしていた時、ふと、「俺はジャズは嫌いなんだけど、この曲だけは好きなんだ」と言って、その曲を口笛で吹いてみた。するとAが、「ああ、その曲はソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』に入ってる『セント・トーマス』だよ。家にレコードがあるから、テープを持って来たら録音してやる」と言って、翌々日、本当に録音したテープを持って来てくれた。 これが突破口となり、それ以来、私はジャズの深い底なし沼のような世界に猛烈な勢いで入り込んでいった・・・ 私がジャズで最初に好きになった曲が「セント・トーマス」だったのは、今から思えば、それがカリプソ調の明るい曲で、ブルースのような暗さがなかった点が大きい。しかも、1973年のアレンジはロックがかっていて、その当時の私には入り易かったのも幸いだった。 ちなみに「サキコロ」(とジャズファンは言う)は1956年の録音なので、アレンジは真にジャズだ。というか、モダンジャズとしか言いようのないカッコ良さと50年代の匂いがムンムンしていて、ジャズ好きになった今の耳で聴くと、断然こっちの方がいい。 (1973年の日本公演の様子は「ソニー・ロリンズ・イン・ジャパン」で聴くことができるが、結構音が不安定で、一本調子に聴こえる。それでもその頃の私にはインパクトがあったのだ。) Aが録音してくれたテープはその後も私の愛聴盤となり、すり切れるまで聴いた。それだけでなく、ヨーロッパを放浪した際も持って行き、いろんな所で聴いた。何度も聴いたから、もう隅々まで理解していたはずなのに、聴く度に新たな発見があった。 パリの安宿のベッドで深夜に聴いた時にこんなことがあった。 「サキコロ」の4曲目に入っている歌物で、ロリンズの生涯でも最高の名演の一つ「モリタート」を聴いていて、サックス(ロリンズ)、ピアノ(トミー・フラナガン)、ドラム(マックス・ローチ)の後にベース(ダグ・ワトキンス)のソロが始まる部分であることに気がついた。ピアノが常に小さな音でコードやイントロを出しながら、ベースの進んで行く方向を指し示し、寄り添うようにバッキングしているのだ。 当時、ダグ・ワトキンスは22才の新鋭で、他の3人はすでに大物だったから、そのレコーディングはさぞかし緊張したことだろう。それを知っているかのようなトミフラのやさしさ。 たぶん、その時、私は孤独だったので、よけいにトミフラのやさしさが心に響いた・・・ 「サキコロ」を聴くと、今でも初めてジャズを好きになった頃が鮮やかに甦る。 かずま
by odyssey-of-iska
| 2009-02-14 17:57
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